2022年12月4日 FM沖縄『EPO 風と海と空と』(毎週日曜日9:30~10:00放送)で、アーティストEPOさんが、11月に訪れた奈留島での出来事について、お話ししてくださいました。
2022年12月4日 FM沖縄『EPO 風と海と空と』(毎週日曜日9:30~10:00放送)で、アーティストEPOさんが、11月に訪れた奈留島での出来事について、お話ししてくださいました。
(※以下、番組内からコメントを抜粋しました。)
先日、この番組でもお話ししている、ペットのお骨をアコヤ貝の核に埋め込んで、世界で一つだけの真珠に生まれ変わらせる【真珠葬】プロジエクトの応援で、また長崎県五島市奈留島に行ってきました。
今回の奈留島の旅。私の目的の一つは、家族だった猫ちゃんたちのお骨の散骨でした。骨壷に入れたまま、お家に置いておくことが、なんとなく、かわいそうに思えてきて、かつて飼っていた猫の2匹のお骨をパウダー状にしてもらい、お天気が良かったら、漁協の方に船を出していただいて、海に散骨させてもらう予定でした。
今回は、あいにく、低気圧と強風で船が出せないとのことで、散骨はまた次回となりました。
もう一つの目的は、もんもちゃん、という2005年に亡くなった猫ちゃんのお骨を、また、あこや母さんのお腹に核入れするということ。今回、初めて体験する、真珠の核入れ。目の前でそのプロセスを見せていただきました。普通の真珠の核入れと同じようにそれは、ちょっとした手術のようなものでした。とてもデリケートな作業で、その道一筋の職人、清水多賀男さんならではの技術です。核入れされた真珠は、海の中で体を休めて、水温が低い冬の間は眠るように過ごし、春を迎えます。水温が高くなると同時に、海の中の生物も活発になってくるので、あこや貝にフジツボや、海藻などが付き始めます。奈留島に春が来る頃、また、お邪魔して、もんもちゃんのお骨が入ったあこや貝のお掃除をしてあげようと思います。
今回の奈留島の旅。ペットのお骨の散骨、そしてアコヤ貝への核入れ、そしてもう一つは船に乗って、あこや貝を放流すること。一番大きなミッションは、私たちを始め【真珠葬】を体験された方々の悲しみと今、そして未来を統合するための時間、「うたいかたり〜静かな祈り」という舞台をすることでした。そこに集まった方々のほとんどが、大切な家族を失って、この奈留島で彼らのお骨を真珠にすることで、悲しみを乗り越えた方々でした。その中に、私も宮川もいました。なので、自分達が誰かのために何かをするというよりも、同じ悲しみを知っていて、そして、まだ傷が癒えていない、私も、宮川も、個人として、自分に寄り添う作品を作りました。
その中の一つ、「静かな祈り」。その作品のリハーサルをしていたときのことでした。
お昼ごはんはみんなで出前をとったんですが、そのお皿を取りに来てくださった、食堂のご主人がいらっしゃいました。ステージ側から、彼の姿が逆光になって、浮かび上がって見えました。彼は静かに入り口に佇んで、なんとお皿を持ったまま、首をうなだれていました。いつもなら、そんなに愛想もなく、車で空いたお皿を取りにくる方なんだそうです。「どうされたんだろう」と、私は、ちょっと不思議な気持ちになりました。同時に、そこに佇む彼の姿が、あまりにも美しくて、直視すると、なんだかこちらが感動で、泣いてしまいそうでした。『ねえ、食堂のご主人は、お皿を持ったまま、お祈りをしていたよ。最後に、「ありがとうございました」って、私に深く挨拶をして、泣きそうになって帰っていった』と、普段、あまり感情を出さないスタッフが感動で泣き崩れるようにして、そのことを私に教えてくれました。その食堂のご主人は、あまりに感動して、まだ、残っていた別のお皿を持って帰るのを、忘れてしまったのだとか。
なんだか私にとっては、すごく印象深い出来事でした。
リハーサルが終わって、お客さまが会場に座り始めると、飼い主の方々の膝に抱かれたペットたちの写真は、私たち側に向けられていました。本番が始まる前から、早くも泣いている方までいて、私たちも、泣きそうになって大変でした。このたくさんのペットたちが、この飼い主の方々と無条件の愛に包まれた日々を一緒に過ごして、真珠になって生まれ変わってきたんだなと思うと、本当に、感動でした。
案の定、宮川雅彦の構成演出による、「うたいかたり〜静かな祈り」は、会場にいらした方々の心を優しく動かし、涙、涙で終わることができました。最後に、この島の高校の愛唱歌、ユーミンが作った「瞳を閉じて」を歌って、終演となりました。
私と宮川雅彦がどのような世界を、この日作ったのかは、具体的には、お話ししないようにしますね。彼があの空間に優しく鳴らした言葉や、歌。優しくて、壊れそうで、痛くて、でも光に満ちたあの愛おしい時間は、今後、真珠葬を体験するかもしれない方々のためにとっておきたいからです。
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